充電不良の直し方(前編)
こんばんは。スマートまっくす代々木駅前店 副店長の蒲倉でございます。
今回の見せまっくすは、スマホの故障と当店で行っている修理の少し突っ込んだ内容についての記事です。
第二回のテーマは……
「充電ができない時、スマホ内ではどんなことになっているのか? また、どうやって修理するのか?」です。
充電不良は、かなり深刻な症状です。
電源を入れられないスマホなんて、小さくてちょっと重たい板でしかないですからね。
一刻も早く修理したいところですが、まずは原因の特定といきましょう。これが、けっこう大変なんです。
「何らかの不良があると充電できなくなる可能性のある部位」を挙げるだけでも、
・給電元コンセント
・アダプタ
・ケーブル
・本体側USBコネクタ
・バッテリー
・ソフトウェア(OSなど)
・温度センサー
・その他基板不良
などなど……
さらには、給電元と端末側の相性も関わってきます。
特定のケーブルと特定のスマホ間でだけ上手く充電がなされない例も、これまで見てきた中にありました。
これは、一つの記事でご紹介するには、あまりに奥の深い話になってしまいそうです。
なので今回は、「本体側のUSBコネクタ」が原因の場合、と状況を限定します。
その中でよくある症状と、実際に端末内部で起こっていることをお見せしましょう!
まずスマホを分解して、基板を露出させます。
今回モデルになってくれる端末はXperia Z3 compact(SO-02G)です。
USBコネクタはここですね。
ちょっとアップに。
そして重要なのが、ココ!
基板をグルッとひっくり返した裏側です。
よく見てください。金色の足が五本伸びていますが、
右側の二本だけ、ちょっと浮いています。
電子工作に詳しい方なら、既になるほどな~と思ってらっしゃることでしょうが、もう少し詳しくご説明いたします。
それぞれの足の下にある銀色のものは、ハンダです。
USBコネクタと、基板にある電気を通すための道、「パターン」とを接合しています。
このハンダから、色々な原因でUSBコネクタの足が取れてしまったことで、プラグを挿し込んでも正常に電気が流れなくなった。
これが、典型的な充電不良です。
充電不良で困った経験のある方、
それはそんな症状ではありませんでしたか?
・プラグを挿し込むと、なんとなくグラグラする。
・普通に挿し込んでも充電されないが、グッと力を入れたり角度をつけると充電できる。
・外見上の破損はない。
そんな時、端末の内部では、これと同じことが起こっていたはずです。
コネクタに力をかけると一時的に充電できていたのは、そうすることで足がハンダに接触し、電気が通っていたから。
だけどそれは一時しのぎに過ぎません。
それどころか、不自然な力をかけているわけですから、足が変形したり、別の足までハンダから取れたりして、だんだん悪化してしまいます。
この症状が出てしまう原因はなんでしょう。
まず思いつくのは、日常の使用方法です。
・充電プラグを挿したままの使用
・不安定な場所での充電
・ケーブルを乱暴に引っこ抜く
など、USBコネクタに負担のかかる使い方をし続けたことが挙げられます。
一回一回は大した力ではなくても、長く負担をかけた結果、ついに電気が通らなくなるまで浮いてしまった……ということですね。
ただ、ハンダは経年劣化しやすいので、大事に長期間使い続けた結果、この症状が出てしまう方もいらっしゃいます。
そもそもUSBコネクタは、かなり頻繁に抜き挿しを行う部位ですから、気を付けていても力はかかってしまうもの。
寿命、というのも原因の一つでしょう。
更には、もともと故障しやすい機種もあります。
SAMURAI MIYABI(雅)やKIWAMI(極)、Zenfone GOなどは、USB不良でのご依頼が他機種よりも明らかに多いです。
これらを使っている方が全員アグレッシブな充電をしている、とは考えづらいですから、
ハンダ付けが甘いのか、力がUSBコネクタ周辺に集中しやすいのか……
ともかく、構造上USBが故障しやすい機種であると言えます。
これをきちんと修理する際には、ハンダとはんだごてを使います。
浮いている足を、元の位置にしっかり固定し直してあげるのです。
電気が通るようになれば修理完了!
「ノリでペタッとつけ直すみたいな、簡単な修理なのか~」
そう思った方へ。
結論を出す前に、ちょっと見てほしいものがあります。
画像の左がXperia Z3 compactの基板。
真ん中はハンダ付け作業に使うコテ。
右はサイズ比較用の缶コーヒーです。
基板の中でも右上のUSBコネクタ部分をよく見て頂きたいのです。
小さいです。
アップにしました。
小さい。
このUSBコネクタから出ている金色の足を、下の基板に一本ずつ付け直すわけですが、対象が小さすぎるので、顕微鏡を覗きながらの作業になります。
そして作業の精密さについても、元の位置に足を固定しさえすれば良い、
というわけではありません。
ハンダは電気を通します。
正しくない位置に余分なハンダがついていると、ショートが起こって基板自体に致命的な損傷が起こる可能性もあるのです。
手を加える範囲は小さいですが、そのぶん慎重さが求められる作業ですから、修理にはだいたい60分から90分のお時間を頂戴しています。
ハンダから足が取れているだけの状態は、USBコネクタの不良としては比較的症状の軽いものです。
端末をお持ち込み頂いたその日のうちに修理完了することも多いですよ
では、もう少し重い症状とは、どういう状態なのでしょうか?
というところで、
そろそろ記事が長くなってまいりました。
一旦区切りをつけておきましょう。
ここまで読んで下さってありがとうございました!
記事編集担当
蒲倉